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安倍政権は経済政策の1つとして、給与などの賃上げ促進を図っています。今回のコラムでは、皆様の役員報酬や従業員の給与の決定について参考になる情報と、従業員給与の拡大に伴う税制についてご説明したいと思います。
1.その差3倍以上!平均給与が最も高い業種とは?
国税庁より昨年の9月に平成28年分の「民間給与実態統計調査」が発表されました。この調査の特徴は、従業員1人から5,000人以上の事業所まで広く調査されていることや、給与階級別・性別・年齢階層・勤続年数別による給与所得者の分布が分かることです。また企業規模別に給与の実態が分かることも特徴のひとつといえます。
平成28年の1年を通じて勤務した給与所得者の人数は4,869万人で、前年に比べて75万人増えました。また平均給与は422万円で1.2万円増えています。男女別では、男性が2,862万人で521万円、女性が2,007万人で280万円になります。前年に比べると、給与所得者数では男性31万人増で女性が44万人増、平均給与では男性0.6万円増で女性が3.7万円増となっています。
次に雇用形態別でみてみると正規は487万円、それに対して非正規は172万円になります。事業所の規模別で平均給与を比較すると、事業所規模10~29人では393万円(給与355万円・賞与38万円)に対して、事業所規模5,000人以上では509万円(給与398万円・賞与111万円)と、事業所規模による平均給与の差は賞与によるところが大きいことが分かります。
業種別の平均給与では「電気・ガス・熱供給・水道業」の769万円が最も高く、最も低い「宿泊業・飲食サービス業」234万円の3倍以上でした。
2.所得拡大促進税制について
所得拡大促進税制とは、平成25年度の税制改正で創設された、企業が従業員への給与等の支給総額を増加させた場合に法人税の控除が受けられる制度です。政府は、企業に対する賃上げ支援を更に強化するため、平成30年度の税制改正にて本制度の適用要件の見直しを行いました。 大企業と中小企業とでは適用要件が異なりますが、今回は、皆様に関係する中小企業について説明したいと思います。※基本的に役員報酬は考慮外
【現行制度の主な要件】
① 給与等支給額の総額が、基準年度(平成24年度支給額)と比較して、
一定割合(3%)以上増加していること
② 給与等支給額の総額が、前年度を上回っていること
③ 平均給与等支給額の総額が前年度を上回っていること
【改正後の主な要件】※適用期限 平成32年度末まで
① 給与等支給額の総額が、前年度を上回っていること
※基準年度との比較要件は撤廃
② 平均給与等支給額の総額が、前年度比で1.5%以上増加していること
上記以外にも細かな要件はありますが、要件を満たせば、給与等支給総額の対前年度増加額の15%が税額控除されます。更に、上乗せ要件(※詳細は省略)を満たせば、25%まで税額控除が受けられる場合もあります。成長企業にとっては非常に有効な制度だと思いますので、従業員の給与の決定の際には参考にしていただくと良いかと思います。
この制度について興味をお持ちの方は、弊事務所までお気軽にご相談下さい。