1 質問
先日、お客様から「理想のキャッシュ・フロー経営とは」という質問がありました。創業間もないお客様にとって、キャッシュ・フロー経営は聞きなれない言葉だと思われます。
では、キャッシュ・フロー経営とはどのような経営でしょうか。
一般的に、キャッシュ・フロー経営とは、企業活動において、「どれだけのキャッシュを稼ぎ出せるか」ということを重視する経営と言われています。つまり、お金の流れを意識して、経営をするということです。
特に、資金が潤沢でない創業間もないお客様にとってキャッシュ・フロー経営は必然的に重要な経営課題となります。
そこで、今回のコラムでは、キャッシュ・フロー経営と創業融資との関連性について簡単に解説していきたいと思います。
2 解説
① キャッシュ・フロー分析とは
一定期間の企業経営状況(収益状況=儲かっているかどうか)を把握するための手段として、損益計算書があります。しかし、損益計算書は発生主義(現金主義ではない)に基づいて作成されるものであり、利益とキャッシュ・フローの増加が必ずしも一致しない点に、問題点があります。これを補うための手法としてキャッシュ・フロー分析があります。具体的には、会計期間の期首と期末の現金残高の差額の要因を分析します。
ポイント 損益計算書の利益=キャッシュ・フローの増加にならない。
② 具体例からの分析
仮に設備投資がなく、すべてが現金取引(売上高100、仕入高80)ならば、差額利益20がキャッシュ・フローの増加になります。
ただし、規模が大きくなるにつれて、設備投資、売掛金、在庫等が発生します。この場合、損益計算書が利益(黒字)でもキャッシュ・フローがマイナスの場合があります。
説例
売上高200 現金仕入高120 在庫20 売掛金残20 設備投資100(耐用年数5年)
ⅰ 損益計算書からの分析
売上高200-売上原価(仕入高120-在庫20)-設備投資の減価償却費20=80(黒字)
ⅱ キャッシュ・フローからの分析
売上回収(200-20売掛金)-現金仕入高120-設備投資100=▲40(キャッシュ不足)
上記のキャッシュ不足をどのように改善すれば良いでしょうか。
ⅲ 解決策
1 創業融資(金融機関融資)による対応
例えば、金融機関から設備資金として100を調達したとします。
売上回収(200-20売掛金)-現金仕入高120-設備投資100+銀行借入100=60(キャッシュ 余剰)
→融資利用により、キャッシュ・フローが改善されました。なお、一般的に、キャッシュ・フローの改善策として売掛金の早期回収・過剰在庫解消等が考えられます。
③ 創業融資(金融機関からの融資)の重要性
上記②の分析による設備資金、仕入れの支払いが、売上の入金よりも先行する場合の運転資金等、資金が潤沢でない創業間もない方は創業融資の利用をすることは、経営を軌道に乗せる一手段になります。また、資金繰り等で常に悩む状況からの解放、さらには、事業のスピードを上げる意味で、創業融資はオススメです。
では、金融機関から創業融資を受けるようにするにはどのようなポイントがあるの でしょうか。
④ 融資の際の金融機関の審査ポイント
金融機関にとって融資したい企業とは、経営内容が良く、安全性が高く、リスクが小さい企業です。当然のことですが、金融機関は返済して頂けるかを重視しています。
では、創業時の融資では、具体的にいかなる点を審査するのでしょうか。
融資審査において評価される点は、主に(1)自己資金と経験 (2)事業計画 (3)家族の理解と協力をしてもらえるかの3点が特に重視されます。
この中でも、自己資金と経歴が重要です。自己資金はコツコツと貯めておくことをお勧めします。経歴は創業との関連性を明確にしましょう。
なお、支払の遅延等は個人CIC(割賦販売法・貸金業法指定信用情報機関)によって調査される場合がありますのでご注意ください。
つまり、金融機関は、コツコツ真面目に商売をし、返済を確実にしてくれる堅実な起業家に融資をしたいのです。
3 最後に
損益計算書の黒字達成は大切ですが、一方でキャッシュ・フローを意識しないと資金ショートが生じ、経営が成り立ちません。創業当初はキャッシュ・フローが不足になる傾向がありますので、創業融資等を利用して、解決しましょう。
最後に、創業融資で悩み、相談したい方がいらっしゃいましたら、一度弊事務所へご相談ください。